EPG4のLab.

ミュート回路について少し調べてみた

2025-01-05 20:30:30
2025-01-10 14:49:27
目次

MSXで音を出す回路を作ろうと思うと5V単一の電源でオペアンプを駆動というところと電源投入時やリセットボタン押したときのミュート回路という部分。なやみます。±12Vあるじゃん、それ使おうよ!となるのですが、カートリッジから取り出せる電流はそんなに多くないみたいなので躊躇してしまいます。

ミュートに関しては思い切ってなし!としても音は鳴らせるし、本来の音声信号がミュート回路の影響を受けないしなので、「ぶっ」とか「ぼっ」なんていう音が出るのを気にしなければ・・・と思ったりもします。そしてアンプのテスト回路をブレッドボードで試したりしているうちに入力、LPF、ミキサ、アンプとつなぐたびにコンデンサを入れたりしていると場所を食うのでやっぱり±12V使いたいなぁと思いだすわけです。そうなったら最後、ここまでのループを繰り返して手が進まなくなります。今回は戻らない。5V単一の環境縛りで行こうと思います。

2022年製作のOPMカートリッジ

この写真は2022年に制作したYM2151(OPM)のカートリッジ(YAMAHAのSFG01カートリッジと互換性はありませんがI/Oポートが同じで"MCHFM0"までの識別用の数バイトのROMをつけています)です。これは場所がなくてという言い訳のもとにミュート回路をつけませんでした。

そんなわけでミュート回路の動きについて検索してみました。こちらのブログがとても参考になりましたのでリンクを貼っておきます。

ミュート用トランジスタって: new_western_elec

ここでも冒頭でかかれていますが、検索するとすぐに高級オーディオ機器ではリレーを使うということがわかりました。ちょっと素子が大きい、駆動電流も多いなぁ・・高級機器でもないし(いや昨今本体がすごく値上がりしています)。

読み進めていくと最初の回路では通常動作時(ミュートしていない時)に音声信号が-0.6Vを下回るとトランジスタのベースからコレクタを通して電流が音声信号側に流れてしまうことが書かれていました。えー!なんてことでしょう。そんなことが!?
確かにNPNトランジスタでベースからコレクタはPNになるのでこの方向でダイオードとして働く・・けど全く思い至りませんでした。

トランジスタがOFFのときに音声信号が-0.6Vを下回るとトランジスタのベースからコレクタに電流が流れる図

ブログではトランジスタの10V/GNDでのON/OFFから、±10VでのON/OFFにしてこれを回避しています。そんな風にするんだ。目からうろこ。そしてそのために「Veboが大きいミュート用のトランジスタを使う」ことがわかりました。さらにコレクタをGND側に使うとか。奥が深い。とても分かりやすい。ありがとうございます。

今回は5V単一電源でという縛りがありました。早速揺らぎどころが発生しましたが、今回はそこは死守であります。ですのでスイッチは5V/GNDの入力になります。そうするとこのトランジスタの接続方法ではベースからコレクタに電流が流れて行ってしまうのを回避できません。

この縛りがそもそもまずいのか・・・ちょっと手持ちのデバイスの回路を眺めてみる・・・±使っています。前回出てきた(A1F直すために必要の)HIC基板の音声出力部にもミュート回路があるけど・・これは今回の説明を当てはめると-0.6V以下で電流が流れるやつでした。(ということは逆に音声信号は±0.6V範囲になっているということ?)

うーんトランジスタOFFの時にベースから電流が流れるようになっていたらダメなんだよな・・・物理的なスイッチとか無理だし、うーんわからないと思いつつ先ほどのブログのコメントを見始めると答えがありました。いや最初は何を言っているのかわからなくて3回くらい読んで回路図を書いてからもう一度読んでようやくわかった気がします。ツェナーダイオードを使いB->C方向に電流が流れないようにしつつ、ツエナー電圧以上の電圧をミュートのON/OFFで使えばスイッチするときには電流を流せるという仕組みです。すごい。そしてさらにコメントでPNPトランジスタを使う例という話まで出ていました。このブログの記事コメントまで含めてすごいありがたい。あまりにも今回の要件に合ってるコメントの流れにここにたどり着いたのが奇跡的な気にさえなります。

PNPトランジスタを挟んでMuteコントロールすることでMuteトランジスタがOFFの時にベース側から音声信号ラインに電流が流れるのを防ぐの図

この図がブログのコメントを頼りに"PNPトランジスタでスイッチする"を復元したものです。Muteの入力がリセット信号となる予定なので5VでMuteオフ、0VでMuteオンになります。PNPなのでベースからコレクタ方向には流れません。Mute側のトランジスタから見たらベースの接続先は浮いているように見えます。かつてはトラ技とかで製品の回路を見てうーんすげーと解析・検討されていたのですね。

ところで先ほど出てきたYAMAHAのSFG01、その出力部分はどうなっていた?と見てみたところ、なんとPNPを使うタイプで5V/GNDでミュート(本体からくるリセット信号を使用)していました。先のブログにもあったようにロジックから直接制御すると信号が鋭すぎるということで、他にもコンデンサ、抵抗、ダイオードなどが追加された形に見えます。読める読めるぞっふがっふがっと歓喜のムスカのような気分になりました。自分にとって飛行石のようなブログでした。

シミュレータで実験してみました

あまり使ったことのないツールを果敢に使ってみます。1つ目の回路は端折ったりしてますがHICから抜粋したものです。入力信号は±1.2Vの振幅のsin波1kHzにしてみました。緑は信号源、赤は出力(Mute回路との接点)での電圧です。
-0.6Vの所でリミットがかかって波形がつぶれているのが確認できました。入力されている信号が±0.6V未満になるようになっているということだと思います。ですが、例えばカートリッジから入ってくる音は-0.6Vを下回るかもという意味では次のPNPを使った回路のほうがいいように思います。

入力の音声信号(緑)が-0.6Vを下回るとトランジスタのベースコレクタ間に電流が流れ出力波形がゆがむ

2つ目の回路は同じく端折っていますがSFG01から抜粋したもの。-0.6V以下の電圧になってもリミットがかかっていません。よさそうに見えます。

入力の音声信号(緑)が-0.6Vを下回ってもトランジスタのベースコレクタ間には電流は流れないので音声出力波形もゆがんでいない

※どちらの図でも赤い波形が若干減衰しているのはR3(1kΩ)とR4(10kΩ)の間で測定しているので、分圧されているためと思います。

Mute回路はこれをベースにすることにします。最後に、Muteトランジスタひっくり返して使い、5V単一電源での環境かつこのつなぎ方だとE->B間の電圧は5Vにはならないと思います。Muteトランジスタじゃなくても機能する気がします。ただhFEがとれるとかほかのメリットもあるみたいなのでMuteトランジスタを探したいです。

この記事を書いた人

EpicGadgets4